生れんとする宗教法案

調査費八千円を今期議会に提出

文部省宗教局ではかねて宗教法の制定を行わんと計画中であったが、愈々いよいよ今期議会に宗教法調査費用八千円を提出した。柴田宗教局長は語る――

「宗教法案を樹てる前に、我国の往昔の宗教制度はもとより欧米諸国の制度を知る必要があるので、この予算を出したものである。英国のごとく国教主義を基礎とした国家もあれば、仏国のごとく1905年に国教主義を棄て、宗教と国家とを取離した国もある。殊に大戦の影響から露国のごとき国体をはじめ、宗教の大妄動を来した国もある。独逸のごときもそれであるから、これらを詳細に調査し、また我国における往時から現在にいたる制度も明らかにしたいのであるが、これという確然たる法律も取締法もないから、よほど困難である。

しかして宗教と思想の関係等も調べた上で宗教法を立案するので、法の精神は多数の宗教上の如何にして陶冶して行くかという行政前運用にある。近時、世間から宗教の実質的の取締とか充実を希望するようであるが、各宗教自体が覚醒し改善を図るのは自由で、国家としてそれまで立ち入るのは不可能である」(東京)

〔大正9年12月27日 『新愛知』 7面〕

目次へ戻る