井箆いの節三せつぞう氏が編輯へんしゅうを主宰する月刊雑誌『宗教改造』が伊豆三宅島に発行所を、名古屋に編輯所を置いて発刊せらるるそうだ。

伊豆と名古屋、昔は「鳥も通わぬ八丈島」と云った、その伊豆の三宅島と名古屋は遠いようだが、もう時代は猫のひたいてき狭量きょうりょうを許さないはず。

思想に国境無しというから、無論宗教信教に国境だの距離だのが在るべきはずは無い。

トルストイ研究に造詣深き井箆氏が編輯を主宰すると云っても、氏は決して偏するような人ではない。

くわるのも筆を手にするも究極の目的は人類幸福のためだ。『宗教改造』の徹底を祈る。

〔大正10年4月6日 『名古屋新聞』 「別天地」欄 無題コラム〕

目次へ戻る