井箆君らの極楽世界の本家、伊豆の三宅島に行ってる若い洋画家鵜城繁うじょうしげる君からハガキが来た。

岩壁に飛沫する怒濤をスケッチして、「小生は元気で毎日製作の日を過して居ます。島は内地では見られぬ愉快な所です。

「平日の海は非常に静かですが、荒れる時には三十尺もある波濤が打ち寄せます。

「痛快な事はとてもたまらぬほどで、その中へ島の若い男は魚を突きに入ります。けれども海岸の割合に魚に乏しいですが、波が余り大きいためであります」云々。

友は各地から避暑を知らせてくれます。居ながらにして避暑地を知る、亦楽しからずや。

〔大正10年7月28日 『名古屋新聞』 「別天地」欄 無題コラム〕

目次へ戻る