メーデー歌でも高唱と
中村公園に集った三十名

それも自由にならず一人に数名の私服刑事がつく

メーデーの日に当る一日、名古屋労働者協会、中部労働組合連合会では当市最初のメーデーを挙行しようともくろんだが、既報のごとく遂に警察から「屋外集合は一切まかりならぬ」と云う言明を受けたので、メーデーの日を一日愉快に労働者の前途を祝福してメーデー歌でも高唱して暮そうと申し合わせ、約三十名の労働者が午後二時頃中村公園に集合したが、労働者一人に対して数名の私服刑事が尾行するという有様で、メーデーの歌を唄うことすら禁ぜられ、遂に当市のメーデーもオジャンになってしまった。労働者側では

「今日メーデーの日位には、平常ひどい労働を続けている自分達に、せめて一日自由に遊ばしてもらいたいものです。東京でも大阪でも公然許可されているのを当市ばかりが許されないということは実際わけがわからないことです。しかも特にメーデーの日だけはと云うのだからひどいんですよ。刑事さん達も前夜の十二時頃から付き添いなので眠っていましたよ」

と不平満々の態度で語っていた。

〔大正11年5月2日 『名古屋新聞』 11面〕

目次へ戻る