光と愛の教バハイズム (上)

石黒修

おお東方の国よ!
広大なる支那よ!日本よ!
汝の誇は古人いにしえのそれの如く再び帰れり。
――ジョセフ・ハンネン――

世界は今や霊の病に悩まされている。すべての宗教は既に年老いて、よろめき倒れんとしている。現在の世界は枝を伸ばして全人類をその木蔭こかげに憩わすほど成長し得る新たなる心霊の若木を要望している。かくのごとき木を私はバハイズムの教えに見出すことを得て、限りなく法悦を感謝している。その鬱々たる巨木は荒漠たる人類世界のオアシスをなし、その木蔭には長い間人類が求めあえいだ「真理の太陽」の光が照り輝き、そこに立ち寄る旅人は人種、宗教、国土、男女の差異をとわず、すべてが清らかな静かな光に浴する。それには愛と調和と統一の調べの涼風が訪れ、求むる者はその木蔭に行って始めて真に「神の王国の香り」をかぎ、愛の泉に霊を癒するのである。

バハイの天啓は組織体にあらず。バハイの起原は決して組織され得べきにあらず。バハイの天啓は実に現代の精神なり。そは現世紀における最高理想の総ての精粋せいすいなり。バハイの天啓は包括運動なり。あらゆる宗教および社会の教を悉々ことごとくここに見出さる。即ち基督キリスト教徒、猶太ユダヤ教徒、仏教徒、フイ教徒、拝火教徒、接神教徒、相愛主義者、精神主義者はいずれもその最高目的をこのバハイ教に見出すことを得べし。更に社会主義者、哲学者らの唱道する理論もこの天啓の中に完全に発達せるを見ん。(原文エスペラント)
――アブデュル・バハー――

バハイ啓示の真髄は平和と親愛と一致と光明の訪づれである。人類の一つなること、最大平和のあけぼのは陸の上にも海の上にも明けそめ、親愛の太陽は人生の深甚の真相を示現し来って、速かに人の心を輝かすことを宣言する。この科学的なる宗教の啓示は、あらゆる学者、識者、宗教家の興味を喚起しつつある。バハイは現代の人類的、精神的、心性的かつ物資的要求に適応せる教えを世界に供給する。

人間の生活は光の国に向っての進行であると思う。人生はザインの世界からゾーレンの世界への連続、理想の国へのあこがれの旅である。無智は智へ、虚偽は正義へ、弱きは強きへ、憎しみは愛へと私達の人類の歴史は光への展開であることを思わないでは居られない。蒙昧もうまいから開化への歴史は、歴史の全ページのすべてみな人間が光明へ向わんとする長途の足跡である。

神の精神の顕現は恰も朝暾ちょうとんの各地によって異るが如し。黎明の場所は異れども、太陽は常に一なり。
――アブデュル・バハー――

光は東より!世界の霊光はまた東の地平線から登る。夜は終り、昼は来り、曙の第一の光はみを破り、雲をはらって、草木は緑となり、花壇は薔薇ばらを以て飾られた。実相の「真理の太陽」は恐るべき光と力を以て再現し、バハーオラー(神の栄光)の御光は全世界に輝きわたる。

偏見は戒むべし。燈火は燈器の如何いかんにかかわらず燃ゆる所に輝きあれ。薔薇はいずれの園にも花咲けば美わしく、星もまた位置の東西を問わず照す時には光は同じ。
――アブデュル・バハー――

〔大正11年6月14日 『名古屋新聞』 「反射鏡」欄〕

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