金子白夢氏著『神秘の宗教』(東京京文社発行)
自分は個人的にはまだ著者に面識はない。そして金子氏の出した本の中で自分の読むのも今度新しく出た 『神秘の宗教』 一冊きりである。告白するが、自分は金子氏を、自分の食わずぎらいのためにか或いは今までに氏の断片的なものの幾つとその講演とをきいていたためにか、どうも虚心に自分の心は氏に対することができなかった。それはちょうど或る牧師などに対する心の眼で見るそれであったことを、いま想い返すのであって、そしてこの心の眼は『神秘の宗教』一冊を読んでその向けどころは多少違ってきたようであるが、やっぱり質的には自分の最初持ったこの心の眼は動かないのである。
ところで金子氏は『神秘の宗教』の「序に代えて」の冒頭に、「私の神秘生活のあるがままの姿は言葉に現わし得ない。私はこの現わし得ない生活の姿を象徴の形で
しかし氏が、「さらに高く光の源に翼を張って『神』の玉座に
〔大正11年6月15日 『名古屋新聞』 4面 「読書界」欄〕