「マルキシアン社会主義」論争

大正9年9月〜10年2月『新愛知』

伊串 桐生という人はね、新聞のレベルをもっと高め、そうして民衆のなかの知識層といった方面の向上を自分の仕事としていた。ですからね、投稿には「資本論」の問題で何回も論じあったことさえありましたよ。

稲垣 大正期に民間の知識人が「資本論」を論ずるということは、 地方であるだけにめずらしいと思います。 「資本論」のどういう点が問題になったのですか。

伊串 片方はコーヒー屋の経営者、一方は真宗の坊主あがりの頭のいい人でした。 「資本論」を読んだ二人で、自分はこう解釈するといえば、 一方は、読み方が違っているといってね。とにかく「資本論」の問題で論じているのはいいきなもんです。

「〈対談〉 大正期労働運動と知識人――名古屋を中心に」. 『思想の科学』 通巻第56号(1963年11月20号) 42頁.

「極樂世界」の周邊