中部労働組合分裂の悲運に遭う

本紙記載の一文から 荒谷氏が放逐されて

昨年の十月五日 愛知電機時計争議以来、 名古屋労働界の最前線に立って労働組合運動のために一派の人々と種々画策していた中部労働組合聯合会理事長 荒谷宗治君は、 目下本紙「反射鏡」に連載中の 「現実に即して」 と題する論文のために、 前記争議一周年記念当日である五日の夜、 矢場町 中央食堂における記念演説会で、 同志の人々一斉にって、 荒谷君を組合外に駆逐すべく攻撃された結果、 同氏の指揮下にあった中部労働組合のうち、 M・P鉄工組合および名古屋労働者協会、 名古屋鉄工組合の三組合は、 遂に中部聯合会から脱退することに決し、 六日正式に右通牒つうちょうを発した。 かくて中部労働組合聯合会はほとんど分裂の悲運に逢着したものと見てよいわけで、 今後の荒谷氏は中部聯合会残余の陶画組合一つを提げて名古屋労働界の前線に立つこと極めて至難の立場にあるから、 この事情にしてこのままに推移すれば荒谷氏はこの機会において或いは名古屋労働界に対する去就を決せんとするかも知れ難いのである、 ということであるが、 一方脱退した前記の三組合は目下のところ各組合単独で労働運動に従事する方針であるらしいという。

〔大正11年10月7日 『名古屋新聞』 5面〕

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